1.分析データ公表の目的
わが国では再生可能エネルギーの導入を促すことを目的として2012年に再エネ設備で発電された電力を固定価格で買い取る固定価格買取制度(以下、FIT制度という)が導入されました。今後、2050年カーボンニュートラルの達成に向け、再エネの主力電源化を実現していく必要があり、そのためには他の電源と同様に市場統合を図っていくことが重要とされています。2022年4月から開始されたFIP(Feed-in Premium)制度や、FIT・FIPを利用せず需要家と相対契約する動きなど、市場が活発化しています。
FIP制度は、再エネ設備から発電された電気を固定価格で買い取るのではなく、再エネ発電事業者が卸売市場等で売電したときの売電価格に対して一定のプレミアム(補助額)を上乗せする制度です。そのためFIT制度からFIP制度に移行することで、気象条件で発電量に影響を受ける中小水力発電では収入予見性の低下(図1参照)と、それによる導入停滞が懸念されています。また相対契約でも、価格を市場に連動させる場合には同様の問題を含みます。

図1 FIT制度からFIP制度への移行による収入予見性の低下イメージ
「令和4年度再エネ導入ポテンシャルに係る情報活用及び提供方策検討等調査委託業務」では、発電事業計画策定や事業評価の一助となるよう、過去の河川流量データと市場データ等を用いて分析し、FIP制度の下で売電した場合に受け取る金額を月平均単価・年度平均単価として分析データを公表します。
2. 分析データについて
(1)データの構成
表示するデータは、発電した電力と非化石価値をJEPX市場価格で販売した上でFIP制度にもとづくプレミアムを受け取った場合の収入合計を、月別・年度別にシミュレーションして収入単価として表示したものです。
新規建設計画への参考資料とすることを主眼にしたので、FIPの基準価格は、2022年度の新設中小水力発電4区分の価格(1kWhあたり20円・27円・29円・34円)を適用しています。
(注意事項)
- シミュレーションに用いたデータは過去のものですが、将来同様の価格変動をした場合に受け取る金額を予想する参考値であり、過去データの当該年度の基準価格を用いていません。
- 表示には「市場平均価格」「環境価値平均価格」を参考として掲載してあります。この金額は「収入単価」の中に含まれています。
- 「インバランス費用」に関しては、所定の方法で算出した値がプレミアムに含まれて(「収入単価」にも含まれて)います。実際の発電所ではインバランス処理に要する費用が発生すると考えられ、その費用は「収入単価」の中から負担しなければなりません。
(2)流量観測地点と発電想定
沖縄県を除く46都道府県について、国土交通省ホームページ「水文水質データベース」(リンク先の「ダム統計情報」を含む)で1時間ごとの流量データ(観測所)・流入量データ(ダム)をダウンロードできる73点の流量観測所と、71点のダム(両者を合わせて「観測地点」とよびます)をシミュレーション対象地点としました。
該当する各地点に、設備利用率60%程度となる発電所が建設されたと仮定してシミュレーションを行い、30分コマごとの発電電力量と、市場売電・FITプレミアムによる収入単価を算出しています。
算出方法の詳細は下記「参考(2)」を参照してください。
観測地点の「エリア」は、電力市場に合わせて一般送配電事業者のエリアで区分しています。
(3)流量観測所とダムのデータ性質の違い
対象ダムは比較的上流にあり、人為的操作が行われていない流量を知ることを主目的としてデータを掲載しています。ただし、当該ダムの上流に別のダムがあり人為的操作が行われている場合であっても、距離が離れている(正確に言うと集水面積比が大きい)場合など、操作される流量の影響があまり大きくないと判断したダムについては掲載対象に含めています。ダムデータを使用する場合には、当該ダムの位置だけでなく上流のダムの有無、位置、目的などにも注意してください。
※ダムの位置を確認するにはDamMaps(https://dammaps.jp/)が便利です。
一方流量観測所は比較的下流にあることが多く、大部分は上流でダムによる流量操作を受けています。中下流部の河川水・農業用水等を利用する場合には、このようなケースが多いと考えられます。ただし、近隣であっても影響を受けるダムが異なる(水系が異なる)場合、ダムの目的(洪水防止、農業用水、発電等)が違う場合などでは大きな差が出る可能性もあります。
計画地点の収入パターンを推測する場合、観測地点の性質の違いにご注意ください。
(4)流量データの期間と欠測
流量データの期間は、2018年度から2021年度としました。丸1日以上の欠測がある場合、当該観測地点の当該年度はすべて欠測(ND表示)としています。
流量観測所については、2021年度シミュレーションに必要な2022年1~3月のデータが未公表のため、同年度はすべて欠測としています。また、2021年1~3月のデータがシミュレーション実施時点で未公表の場合も同様としています。
北海道については、2018年度にブラックアウトが発生したため、同年度の価格データは異常値とし、欠測としました。2019年度のFIPプレミアム計算に2018年度の価格データが必要となるため、2019年度も同様に欠測としました。
北海道の観測所は2021年1~3月のデータが未公表だったため、結果的に2018年度から2021年度まで全データが「ND」となっています。
3. 分析データの確認方法と手順
トップメニューより、[データ]>[搭載データ(地図)]をクリックします。
地図画面左側のアイコンマーク「FIP情報」をクリックします。
ステップ1:確認したいエリアの複数地点の年度別データ表示
- データを確認したいエリアを表示させ、クリックします。
- 表示画面上でデータが存在する観測所の年度別データ一覧がポップアップ画面に表示されます(図2)。
ステップ2:確認したい観測所の年度別データの表示(※ステップ1の省略可)
- 確認したい観測所ポイント(図3の
)をクリックします。
- 当該観測所の年度ごとのデータがポップアップ画面に表示されます。
ステップ3:確認したい観測所の月別データの表示(※ステップ1か2を経由して実施)
- ステップ1で表示されたポップアップ画面から、確認したい観測所の年度をクリックします。もしくはステップ2で表示されたポップアップ画面から、確認したい年度をクリックします。
- 当該観測所の月別のデータがポップアップ画面に表示されます(図4)

図2 確認したいエリアの複数地点のデータ表示イメージ

図3 確認したい観測地点の年度別データの表示

図4 確認したい観測地点の月別データの表示
4.参考情報
(1)計算に用いたデータの原典等
No. | 項目 | 原典 |
---|---|---|
1 | プレミアムの計算方法 | 「エネルギー供給強靱化法に盛り込まれた再エネ特措法改正法に係る詳細設計」(2021年2月) |
2 | プレミアム計算の 簡易シミュレーション |
資源エネルギー庁ポータルサイト「なっとく!再生可能エネルギー」掲載の簡易シミュレーション |
3 | 基準価格 | 資源エネルギー庁ポータルサイト「なっとく!再生可能エネルギー」から2021年度の買取価格 |
4 | 参照価格 | (一社)日本卸電力取引所スポット価格表の「FIP参照価格」 (2020年度以前は、No.2にしたがって同表の「回避可能原価」) |
5 | 非化石価値の市場価格 | (一社)日本卸電力取引所 |
6 | インバランスリスク単価 | 資源エネルギー庁新エネルギー課が[『交付金の額の算定に係るインバランスリスク単価』として毎年度公表する金額 ※2022年度以降は電力広域的運営推進機関が公表 |
7 | 一般送配電事業者の供給実績 | 資源エネルギー庁ポータルサイト「なっとく!再生可能エネルギー」から各一般送配電事業者にリンク |
8 | 河川流量 | 国土交通省「水文水質データベース」 |
(2)計算の考え方と根拠資料
- 計算方法
上記資料No.1に準拠しました。No.2のシミュレーションツールを用いて計算値に問題がないことを確認しています。
- 基準価格(FIP価格)
上記資料No.3を根拠に、2021年度価格(2022年度も同額)にしています。本文に書いたとおり、今後新規認定を受ける事業者が、過去のデータをもとに未来予測する目的で提供するデータなので、直近年度価格を過去データに適用するものです。
- 参照価格・非化石価格・インバランスリスク単価
上記資料No.4~6。
- 電力供給実績
上記資料No.7。
- 河川流量
上記資料No.8。ダム流入量は、同ページからのリンク先「ダム統計情報」。
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